「生きている理由・・・それは歌うこと。」

なぜ私にとって生きることと歌うことが同等なのか?

それは私がプロの歌手として初めてのアルバムをリリースする矢先の出来事にある。

 

2007年の夏、甲状腺癌が発覚。

即入院。

右頸動脈、右肩リンパ節、耳下腺リンパ節にも転移が認められ、

右側頸部はかなり広い範囲での切開と複雑な切除が必要とされた。

 

もし気管の骨に達していれば気管切開となり、

その場合は日常会話の声も困難になることを知らされた。

「歌はもちろん諦めてください。この状態では絶対無理です。」

担当医からはっきりと家族の前で告げられた時、頭の中は真っ白。

 

涙すら出なかった。

 

すべては生きてこそ。

 

命のために、あまりにもリスクは大きかったが、

歌手として致命的となる大手術を行う決心をした。

だが・・・やはり私の心配事は、「命」よりもむしろ「声」だった。

 

声の出ない生活、歌のない人生・・・。

私には到底耐えられるものではない。

 

そんな大きな不安を抱えたまま、8時間に及ぶ手術に臨んだ。

 

無事に成功。甲状腺右葉と43個のリンパ節を切除。

気管軟骨は削ったが、骨に転移していないことを確認。

最大の心配であった気管切開は免れた!あぁ、神様ありがとう!

 

しかし、そこからの現実は想像以上に厳しかった。

 

・・・声がほとんど出ない。

 

癌の宣告を受けたとき以上のショック。。。

 

悔しい。 なんで私が? どうして今? どうして声に関わる部分を??

・・・何度も泣いた。

 

声のみならず、様々な合併症や後遺症があり、首は傾いたまま、体調はすこぶる悪く、

普通の生活になかなか戻れないことに焦りと苛立ちを覚えた。

 

「歌」という観点からは、声帯は全くいじることはなかったため声の質はそのまま。

ただ、リンパ節を摘出するにあたり首の筋肉を削ったことで音程をコントロールする

喉ぼとけ外側からの筋肉の長さが変わってしまったため、

その新たな左右のバランスの差を、感覚だけを頼りに調整して音程を当てなければならなかった。そしてその新たな感覚を体で覚えていかなくてはならなかった。

これには非常に時間を要した。そしてかなり高度なテクニック。

まさに振り出しに戻された。

そして、ホルモン治療の段階でバセドウ病の症状が出る時もあり、

そのせいで声がかすれたり、首の瘢痕部分が固まって声が出しにくくなったりと、

歌のパフォーマンスをキープするうえでは様々な困難が待ち受けており、

それをどう克服するか、または、どううまく付き合っていくか、

試行錯誤の連続であった。

 

このようにかなり根気のいるリハビリであったが、数年間ゆっくりと時間をかけて

今ではほぼ傷口の癒着もなく、完全復活を果たすことが出来た。

 

そんな試練を乗り越え、私が奇跡的に歌手として蘇えることができた理由は何か?

 

それはおそらく、歌手としての(根拠のない)自信と使命感。

病気で失ったもの以上に、病気から教えてもらったことのほうが多かった。

だから身体は辛くても希望に満ちていた。

そう、手術前には歌えなかった確固たるメッセージが私の心にある!

 

そしてどんな時も私を見守り支えてくれた周囲の人々への感謝と愛があった。

この復活は決して私一人では成し得なかった。

私が与えてもらった愛を、みんなに還元したい。

 

そして何よりも、音楽と歌が大好きだったから。

諦めたくたって 諦められなかったから。

 

「生きているってすばらしい!声が出せるってすばらしい!」

 

一度失いかけた歌を再び歌うことで、誰かの希望や勇気になれたら。

 

同じ病気や同じように絶望の淵を歩いている人たちへ未来の光を届けることができたら。

 

ひたすらそう願いながら、歌い続けてきたからこそ、今のERIKOがあると思う。

 

長い人生の闘いはこの先もずっと続いていくであろうけども、

信じていれば、必ずその日はやってくる。

 

音楽も人生も花のよう。

情熱を注いで待っていれば必ず美しいものが芽生え、そこに花が咲く。

 

そう、何事も最後は自分の心が決める。

 

そして、自他共に愛し、自他共の幸せを願う気持ち。

そんな永遠の生命の輝きを知った今だからこそ、

生きる喜びをより多くの人々に伝えるために、今ひとりで泣いているあなたへ、

愛と勇気と希望の唄を この声が続く限り、歌い続けていきたい。

 

私の歌を聴いてくださるすべての皆様に心からの感謝でいっぱいです。

いつも変わらぬ温かい応援をいただき、本当にありがとうございます。

 

宇宙いっぱいの愛を込めて。

 

                            ERIKO